山形県新庄市泉田地区の農家・指村僚汰さん(30)が、農家としての生き残りをかけてクラウドファンディングに挑戦する。
収入面や担い手不足などで厳しい状況が続く農業に、少しでも明るさを取り戻そうと、幼稚園児など子どもたちに向けた食育動画の制作を計画している。
目標金額は100万円で、出資者へのリターンには指村さんが栽培している「つや姫」などお米や、伝承野菜「最上赤にんにく」を提供する予定。
父の背中を見て、農家になることを決意
幼いころから農作業に励む父の背中を見て育った指村さん。小学生の時の夢はもちろん農業。一時は迷いが生じることもあったものの、地元の県立農業大学校(現県立農林大学校)を卒業し、実家で就農した。
米を中心に栽培する一方、最上地域の伝承野菜「最上赤にんにく」も生産している。JAへの出荷のほかに、「指村農園 Lilu・Storia」を立ち上げ、自作ホームページを作成したり、直販サイトを通した個人販売を手がけたりもしている。
厳しさを増していく農業
一方で、農業を取り巻く環境は年々厳しさを増している。
米の需要量は昭和37年ころをピークに減り続け、ここ数年では年間10トンのペースで減少が加速している。需要の低下に加えて米の販売価格も1俵(60kg)1万3000円前後という低い水準が続いており、若い世代は収入の伸び悩む農業から離れ、2020年現在で農家の平均年齢は67.8歳。農業人口の高齢化も歯止めがかからない(農林水産省「農業労働力に関する統計」)。
最上伝承野菜「赤にんにく」の栽培にも挑戦
稲作だけで経営が成り立たないと考えた指村さんは、最上伝承野菜「最上赤にんにく」の栽培を始めた。
最上伝承野菜とは、栽培される地域の気候、風土、土壌などに適応した、代々その家や地域で受け継がれてきた昔ながらの農作物である。
その土地に適した作物であるため、同じ種であっても別の地域で育てるとまったく育たないことがある。
最上赤にんにくとは、その名の通り赤い外皮をまとったにんにくで、一般に流通しているにんにくよりも大粒で、生で食べると辛みが強く、熱を通すと甘みが増すのが特徴だ。
ちなみに、現在スーパーなどで売られている野菜は、種苗メーカーが開発するF1種と呼ばれる大量生産向きの品種である。F1種からは種を採取してもうまく育たないため、多くの農家は、毎年種や苗を購入して野菜を生産している。
子どもたちにお米ができるまでを動画で伝えたい
父の背中を見て育った指村さんは、自らも一児の父となった。
今の農業を取り巻く環境を考えると、自分の子どもにも「農業をやれ」と言えるかどうかは自信がない。
しかし、農業の魅力、農家としての誇りは次の世代にも時間をかけて伝えていきたいとの思いはある。
20代で就農し、自社農園のホームページ作成やにんにくの個人販売などに挑戦してきた指村さんは、これから次のプロジェクトを進める。
クラウドファンディングの目標金額は100万円。
出資金は、子どもたちの食育のための動画作成など、農業の面白さを子どもたちとその親である消費者に伝える情報発信のために使う。
稲やにんにくなど、農産物が種や苗を植えてから収穫されるまでの様子を撮影し、植物の育つ様子や農業の面白さを伝える動画として編集する構想を立てる。
動画の制作・配信は、市内のIT系会社に勤めていた友人や、クラウドファンディングに挑戦した経験をもつユーチューバーの協力を得て進めていく予定。
食育動画のほか、webサイトによる情報発信・産直機能の強化、生産者と消費者とのコミュケーション事業なども行っていくとのこと。
出資者へのリターンには、金額に応じて指村さんが作る最上伝承野菜「最上赤にんにく」や、特別栽培米「つや姫」など、自作の農産物を提供する。
クラウドファンディングは専門サイト「CAMPFIRE」で3月25日から5月3日まで配信予定。
https://www.noukanotsukue.com/mogami_farmer/320