山形県最上地域の有機農家で結成された団体「もがみオーガニックビレッジ」が、農家向けの栽培研修や、一般市民へのPR事業など、地元に有機農業を広げるために活動している。
また、地域内での有機農産物需要を確保するため、学校給食に有機農産物を使ってもらうための意見交換を各関係機関と行っている。
さまざまな業界で持続可能な社会実現のための事業が展開されている中、農林水産省も今年3月に2050年までに有機農地25%の実現を目標に掲げた。
今後日本各地で取り組みが進むであろう有機農業は、最上地域において定着するだろうか。
活動2年目のもがみオーガニックビレッジ
任意団体「もがみオーガニックビレッジ」(以下、MOV)は、新庄市の有機農家・石井昭一氏(おいしいファーム)を中心に、有機農業や無農薬栽培などに取り組む最上地域の生産者と、その支援者ら10数名で、2020年にグループを結成された。昨年度は全国で有機農業に取り組む指導者を招いての栽培研修や、オーガニックの魅力を伝える映画上映など、生産者と消費者双方にPRする活動を実践した。
MOVは農林水産省の補助金(オーガニックビジネス実践拠点づくり事業)の採択を受けて活動している。2021年度も昨年同様の取り組みを行うほか、新型コロナの感染状況を確認しつつ、さらなる交流イベントなどを企画している。
有機農業って何だっけ?
有機農業とは、現代の農業では一般的となっている化学的合成物を使わず、自然由来の農薬・肥料のみでお米や野菜などの農産物を栽培することをいう。化学的合成物を3年以上使用していないなど農地であるなど、一定の条件を満たせば、有機JASの認定を受けて販売することも可能になる。
自然環境への負荷や安心安全な食材といった一般消費者の需要から、近年急速に関心が高まっている栽培方法である。
ドイツやフランスでは、有機専門ではない一般の販売店でもオーガニック商品が増加するなど、欧米におけるオーガニック市場は近年大きく拡大している。
農林水産省「2050年までに農地の25%を有機に」と発表
2021年3月、農林水産省は2050年までに日本国内における全農地の25%を有機農業の用地にするという目標を発表した。その他にも、農林水産業のCO₂ゼロエミッション化、従来の化学農薬使用量の50%低減など、自然環境への負荷を軽減するための高い目標を掲げている。
持続可能な社会の構築に向けた取り組みとしてSDGsの理念が一般市民にも浸透している中、政府方針としても環境に配慮した農業生産への取り組みにも動き出した形だ。
しかし、有機農業のための用地面積は、有機先進国であるイタリアでも農地全体の15.8%、スペイン9.6%、ドイツ9.1%、フランス7.3%であり、一方の日本はわずか0.2%(2018年時点)[*1]。25%という目標を実現するために、乗り越えるべき課題はけっして小さくない。
最上の学校給食をオーガニックに
欧米でオーガニック市場が急速拡大している一方、日本の有機食品市場はどうか。
「ほとんどすべて『有機』を購入している」という日本人の割合は、2009年の0.9%から、2017年には1.68%と、8年間で2倍近くまで増えている。全国の有機市場の経済規模(推計値)でも、1300億円(2009年)から1850億円(2017年)へと急速に消費者の需要は拡大していることが分かる。
ただ一方で、世界と比較すると日本の有機食品の消費量は極端に少ない。1人当たりの年間有機農産物消費額は、スイスが最も高く288ユーロ、続いてスウェーデンの237ユーロ、オーストリア196ユーロ、アメリカとドイツが122ユーロであるのに対して、日本はわずか11ユーロ[*2]。
生産者が有機農業に取り組むためには、消費者が進んで有機農産物を購入する必要があるが、見通しは厳しいそうだ。
そこで農水省は、有機農業の推進事業「オーガニックビジネス実践拠点づくり事業」で、地域の学校給食にオーガニック食材を使用してもらうための取り組みを後押している。
本事業の採択を受けて活動しているMOVも、最上地域の学校給食に地元農家のつくった有機農産物を使ってもらえるように今後働きかけていく方針だ。
*1 農林水産省「有機農業をめぐる事情」(令和2年9月)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/meguji-full.pdf
*2 農林水産省「有機農業をめぐる我が国の現状について」(令和元年7月26日)
https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2019/attach/pdf/190726_01.pdf
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