10月6日、新庄市本合海にて山ぶどうの収穫体験が行われました。
公道から未舗装の農道に入って数分のところ、中山間地にある黄金色の田んぼを目の前にして、そのぶどう棚はあります。
新庄市はじめ、最上郡内から20名以上の参加があり、山間地のぶどう棚はにぎわいました。
或る農家の思いのもと集まった有志団体「一房のぶどうプロジェクト」
主催するのは、「一房のぶどうプロジェクト」。
本合海地区の農家であり、今回の山ぶどうを栽培している佐藤哲雄さんが代表となって活動しているグループです。
「新庄には地域に眠っている宝がまだまだたくさんある。そうした宝を活用して、この本合海に、そして新庄に、外から多くの人を招いて盛り上げていきたい。どうか皆さん、ひとつご協力をよろしくお願いします」
自分が長い年月をかけて大事に守ってきた農地を、次の世代に残していくために、佐藤さんは方々に足を運んで働きかけています。
そんな強い思いにほだされた地域の有志が集まって、一房のぶどうプロジェクトは立ち上げられました。
団体名の由来は有島武郎の短編小説「一房の葡萄」から。
佐藤さんが小学生のときに国語の教科書で読んだ思い出が残っており、この名を使わせてもらったそうです。
今回の山ぶどう収穫体験は、一房のぶどうプロジェクトが企画する最初のイベントでした。
山ぶどうの収穫作業
代表の佐藤哲雄さんからの説明を受けて、参加者の皆さんが、いっせいに作業を開始します。
一般的な観光農園のように、自分が持って帰る分や食べる分だけを収穫するのではなく、いつも農家がやっている仕事としての「収穫体験」です。
紙袋をかぶせてある山ぶどうをハサミで切り落として収穫。
しぼんでしまった粒や色のよくない粒を落として出荷用に選別します。
この選別作業が、単調で手間取る大変な仕事なのですが、我を忘れて集中してしまう方が続出していました。
最終的には、「もっとやりたい」「バイトしたい」と言い始める方も。
機転の利く方が、獲れたての山ぶどうを手ぬぐいで絞り、即席の山ぶどうジュースを作ります。
糖度20%のぶどうの甘みとほどよい酸味がさわやかな味わいで、皆でとりあうようにして回し飲みをしました。
ひと仕事を終えた後は、ぶどう棚の下でおにぎりの時間
作業を終えた後は、昼食の時間です。
今回用意されたのは、山形県の新品種「雪若丸」。佐藤さん自作のお米で、今年収穫したばかりの新米が使われました。
佐藤さんの奥さん方、女性チームが朝から握り、笹の葉の上に。
おにぎりと一緒に味噌が添えられます。こちらは伝承野菜の「新庄くるみ豆」を原料にした自家製味噌です。その名のとおり「くるみ」のような香ばしさが漂う豆で、上品な味わいの味噌でした。
その他にも、くるみ豆のきな粉。しそ巻き。なす漬、青菜漬、おみ漬などの漬け物も振舞われました。
ぶどう棚の下、木洩れ日の上にブルーシートを敷き、車座になって佐藤家提供の漬け物入りタッパーを取り囲みます。
至福の時間に自然と笑みがこぼれます。
食事を終えて、まだ作業したりない方もいたようでしたが、全員で後片付けをして解散。
お土産に自分たちで収穫した山ぶどう二房を受け取り、農地を後にします。
国有地を借りて、10年間育ててきた山ぶどう
収穫体験に使われた山ぶどうは、佐藤哲雄さんが本合海の中山間地に10年かけて育ててきたものです。
剪定、間引き、紙袋をかぶせたりと、果樹の栽培には苦労が絶えません。
しかし、ここの農地は佐藤さんのものではありません。
営林署苗圃跡地といって、ここはかつて木材調達のための苗木を育成する事業が国の政策として進められていた土地です。
そして、今でもこの土地は新庄市にありながら国有地となっています。
佐藤さんはこの広大な土地の一部を借りて山ぶどうを育てているのですが、国の持ち物である以上、この土地一帯を自由に使うことができません。
歴史、文化、自然ゆたかな本合海に、山ぶどうの収穫体験ができる農地を加えてにぎわいを取り戻したい、という夢があります。
すでに苗圃としての役割を終えた国有地は国として用をなさない土地であり、新庄市の活性化のために有効活用したいと願っています。
自分が守ってきた農地や自然を次の世代につないでいくために、佐藤さんはこれからも走り続けます。
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